昨年の明るいニュースのひとつ。『ノーベル化学賞が名古屋大学野依良治(のより・りょうじ)教授の手に』。

 野依教授はアメリカのシャープレス博士らと共に受賞されたことはまだ記憶に新しいことと思います。
その業績の最もすごい点は「不斉合成(ふせいごうせい)」の開拓と言われているのですが、
はたして「不斉合成」とは一体何なのでしょうか?
難しい説明が必要になってしまいがちな話を今回は、できる限り分かりやすく解説してみようと思います。
物質をつくっている「分子(物質を組み立てている微小な粒とお考え下さい。単位は『ナノ』。
ナノは1メートルの10億分の1。
この分子をさらに細かくすると『原子』になります)」には、左と右にねじれたものがあります。
それは丁度ねじのように。
そして私達生物を形作っている成分分子もねじれているものが多いのです。
そんな分子がまとまってできるものが「有機化合物」で、
例えば、たんぱく質を構成するアミノ酸、遺伝子を作り上げるDNAがそうです。
 その有機化合物は左右対掌(ちょうど鏡に映したように、右と左が正反対な形になっています。


















<※下図参照>)な2種類の物質となり作られます。
その2つは使われている分子こそ全く同じですができた有機化合物の中身は別のものになっています
 その対の中から生物は必要なほうだけを作り、必要ではないほうは作りませんが、それに対し人工的に有機化合物を作るときには、
左右それぞれの向きにねじれた物質が等しい量だけできてしまい、
生物のようにどちらかが一方にめじれた物質だけを作り出すことはできなかったのです。
 『一方向にねじれた分子だけ(必要なほうだけ)を作ること』。
これは、生物だけが成せるわざとされ、そんな考え方が長い間化学を専攻する者達の常識とされてきました。
そんな化学の「常識」に真っ向から挑戦し、くつがえしたのが野依教授でした。
野依教授らは一方向の形をもつ分子、『バイナップ』と呼ばれる鋳型を作り、
その鋳型に沿って一方向子こそ全く同じですができた有機化合物の中身は別のものになっています。
その対の中から生物は必要なほうだけを作り、 必要でないほうは作りませんが、それに対し人工的に有機化合物を作るときには、
左右それぞれの向きにねじれた物質が等しい量だけできてしまい、
生物のようにどちらか一方にだけねじれた物質だけを作 り出すことはできなかったのです。にねじれた分子だけを優先的に作る技術を確立されました。



それが「不斉合成」なのです。

 この方法を使って実際にミント(ハッカ)の成分であるキラルな(対掌のこと。 このような性質を 『キラリティー』といいます)
メントールの製造は工業化されたのです。
これによりメントールを作るときに今までどうしても出ていた
「必要でないほう(良い香りがするものとそうでないものがあるそうです。)」 を作らずにすむようになったのです。
そして香料会社として著名な「高砂香料株式会社」が『バイナップ』を使って挑戦した結果、世界に先駆けて天然型キラルなメントールが工業生産され、
その生産高は世界の需要の半分を満たすようになりました。
最近では、抗生物質の原料の一つもこの方法で製造されています。

 「不斉合成」・「バイナップ」・「キラリティー」などという聞き慣れないことばが数多く登場しましたが
今回初めて耳にした方にも少しは分かって頂けたでしょうか。
このように分子のキラリティーについての研究はまだまだ先に進んでいます。

 最後に余談ですが分子キラリティーの日本の研究者の研究水準は非常に高かったりします。

【デジラブ記】

 

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■昨年わが国の出生率は最低を記録■

 国立社会保障・人工問題研究所が公表した将来 の推計人口は女性1人が生涯に産む子供の数が長期的に1 .39人どまりになるとしている。
出生率は1992年に1.80人、1997年 に1.61人と下方修正され、1998年に1.4人を割り込んでしまっ た。
政府は真剣に今後の対策を検討するという。
育児費と仕事の負担がずしりと重く両親にのしかかるという現状の打破が是非必要なのではないだろうか。
福祉の先進国として著名なデンマークでは、生活支援の法律の整備により落ち込んでいた出生率が昨年ついに上向きに転じた。

◇参考書◇

湯沢雍彦(お茶の水女子大名誉教授)編著「小子化をのりこえたデンマーク」(朝日選書)
¥1300

 

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薬の安全な飲み方

 ―自分の身体は自分で守る―

自分が服用する薬は自分の責任で、自己決定すること。
まず医療の専門家(医師、薬剤師など)に説明を聞くこと、しかし自分で納得することが必要です。
薬は好ましい作用を期待して投与されますが、 薬の副作用を完全にゼロにすることはできないのです。
薬は両刃をもつ剣であることを忘れないように。
薬を服用するときにしばしば見過ごされているポイントを挙げてみましょう。

●薬は水で飲みます。

薬は原則として、からだに入ってから溶解し、効きはじめるのです。お茶やジュース、食べ物と一緒に飲むと、
それらの成分が飲んだ薬と相互に作用して効かなくなったり、あるいは有害な物質を生じることがあります。
ですから薬はコップ一杯の水で飲んでください。

●薬は食後に飲むのが一般的だと思われていますが、食事により薬の吸収速度が変化して、効き方が違ってくる場合があります。薬を飲む時間が食前、食後、食間などと指示されているときには、必ず服用の時間を守りましょう。

 

●食間とは食事と食事の間、前後2時間くらいをあけて服用することを指します。

●頓服(とんぷく)とは、熱が高いとき、痛いときなどの辛い症状が出たとき、食事と関係なく服用することをいいます。

●薬の効き目と服用量との間には重大な関係があります。丁度良い量を用いたとき、その効果を発揮します。
量が多過ぎれば作用が強まり、副作用や中毒を起こすこともあります。もちろん少な過 ぎれば効果は無くなります。

※指示された服用量を守りましょう。

 

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