“IP電話”という 新しい技術
IP電話とは、インターネット通信基準でデジタル化した音声を、細切れの単位(パケット)に分けて伝送し、ネットの受信側で復元する方式です。
回線交換機を経由して加入者同士をつなぐアナログ電話とは異なり、ネットで効率的に音声をやりとりするので、通信料金が低額になります。
送受信のどの部分にネットを使うかによっていくつかの方式があり、事業者により音声の品質が異なります。
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今までの電話網は、加入者同士の回線をそれぞれが契約している電話局の交換機でつなぐシステムでした。
このようなネットワークでは、加入者の電話は双方の電話局の交換機に接続され、
両電話局の間の距離と通話時間とによって通話料金が課せられる仕組みになっていました。
大事なことは、必ず交換機を通して通話が行われてきたことです。
接続される電話の交換機が同じ局内か局外か、国内か外国かによって料金が変わってしまうのです。
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しかしインターネットが普及すると、在来の電話網とは別に、交換機を使わず、
その代わりにルータという接続機器によってコンピュータのデータを宛先まで送る技術が進歩しました。
IP(internet-protocol)ネットワークと呼ばれるものです。
このネットワークを使うと、従来型の通話料の課金はできなくなります。
インターネットを利用するために電話回線の常時接続が普及し、いつでも電話線を通して相手にデータを送ることが可能になってきました。
IPネットワークとして利用する電話回線の使用料は一定額で、しかも安価なものとなったのですが、
このネットワーク上で、音声をパケットとして伝送し、通信を行なうことはできないでしょうか。通話の料金は低額になるはずなのです。
そして実際にインターネット経由のパソコンを使って通話する「インターネット電話」が構築されました。
IPネットワークを使用する通話には、パソコン対パソコン、パソコン対電話、電話対電話といった形式が可能です。
ただし実用化に際して乗り越えなければならない技術上の大きな問題点があるのです。
インターネットでは、通常通信速度を保証しない型(ベストエフォート型)のネットワークが使われています。
これを音声の通信に利用すると、相手の声がワンテンポ遅れて届く「音声の遅延」など、通話の品質を劣化させる事態が生じてしまいます。
しかし通信の品質を高めるための技術開発が進められ、ほぼ実用化にこぎつけることができました。
グラハム・ベル(米)が電話機を発明したのは1876年(明治九年)のこと、横浜で電話事業がスタートしたのが1890年、
それから百十年余になりますが、 携帯電話への革新を経て、いま電話事業にさらに大きな波が打ち寄せています。