人間の遺伝子を読む。 ー「ヒト・ゲノム」が全て解読されたー

 生物の遺伝は生殖細胞がもつ染色体によって起こります。
 染色体は、DNAという細い糸のような分子がらせん状に巻いて短くなったものですが、
遺伝情報はこの分子に特徴を与えている四つの塩基の配列順序によるものです。
 このメカニズムが解明されたのは、そんなに古い話しではありません。
有名なノーベル受賞者、クリック、ワトソンが発見したDNA分子の二重らせん構造がそのはじまりです。
 四つの塩基はアデニン(A)チミン(T)グアニン(G)シトシン(C)で、
それぞれが対をつくって二重のらせんを巻きます。
これらの四つの塩基の配列を決めることをわが国ではゲノムの解読と言っています。
ゲノムとは遺伝情報の全体を指します。
 ヒト・ゲノムの解読は、このゲノムの全部の塩基を決定する作業です。
ヒトのDNAは三十億の塩基対がありますので、配列順序を決定しようということは、
かつては大それた考えとされ、思いもよらないことでした。

 ところが、これを決める技術が最近急速に進歩しました。
そしてこの配列の決定は、生き物の仕組みについての多くの謎を解くことに役立つことがわかってきました。
 生き物に人為的な手を加える生命工学と呼ばれる技術、医療診断など、
また新しい薬を開発することもその一つで、際限のない応用が広がりを見せています。
 各国、各企業は競ってヒト・ゲノムの解読に取り組み、また国際提携の情報化も進み、
一昨年ついにほぼすべてのヒト・ゲノムが解読されました。
2003年には完全に読み終わるであろうと言われています。

 このような進歩が果たしてどのような結果を残すのか。
 人類の幸せに役立つことになるか。  あるいはただビジネスの道具になるか。
みんながヒト・ゲノムの解読に関心を寄せ、真剣に考え、
あるときはこれに畏怖(いふ)をもって接しなければならないと思います。

 糸状のDNA分子がタンパク質(ヒストンやプロタミン)に巻き付いて染色体を組上げる様子を
コンピュータグラフィクスでシミュレートしました (下の画像)。
情報薬学研究会編CD-ROM「情報と薬学」第二集より引用させて戴きました。
制作:(株)メタコーポレーション・ジャパンの高沖英二氏。

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