温室効果ガス」の削減は待ったなし!

 地球環境の悪化を防止するための国際基準、「京都議定書」がいよいよ国会で批准されました。
 「京都議定書」を批准することによって、日本は温室効果ガスを1990年比で6%削減する義務を負うことになります。
  気候変動に関する政府間パネルは、温室効果ガス濃度がこのままの増加率で推移して行くとき、これから100年後の21世紀末までに、地球上の気温は1.0ないし3.5℃も上昇すると予測しています。このような急激な変化は、いままで地球が、そして人類が経験したことのないものです。
 気温の上昇によって南極、北極の氷が溶けて海面が上昇する、島は沈み、海岸線が後退する、また気候の熱帯化にもとづく環境の変化に生活がついて行けなくなる、といった様々な影響が出てきます。

 地球温暖化とは、二酸化炭素(炭酸ガス)など、地球の熱を外に逃がさない働きをもった「温室効果ガス」が増え、地球の気温が高くなることを言います。炭酸ガスは主に石炭、石油などの「化石燃料」を燃やすときに出来てきます。古くは19世紀産業革命の時代から大量に使用されるようになったため、大気中の濃度が増加して、地球上の気温は急に上昇しはじめました。気温には自然の変動がありますが、地球上の人類の活動によるものであることにほぼ間違いありません。

 議定書は、圧倒的に大量の化石燃料を使ってきた先進国により重い責任があると考え、先進国に対して特にきびしい温室効果ガス排出量の削減目標を割り当てました。欧州各国はすでに議定書を批准し、削減計画を積極的に進めていこうとしていますが、最大の排出国である米国は、「議定書は先進国に不利だ」として、京都で約束した議定書を批准しないことを表明しています。国内で産業界が強く反対しているからです。
 このたび日本が議定書を批准したことは、先進国の先駆けとして評価されるべきで、日経連の奥田会長は歓迎する談話を発表されています。なおやや後ろ向きの感がある経団連の今井会長は「米国の参加、負担の公平化について外交努力を求める」ことを表明されています。

 環境省の資料によって、近年の温室ガス排出の推移および削減の目標を示しました(図1)。
 また1999年度の日本における炭酸ガス排出量の部門別の内訳は(図2)のようになります。

 政府は6%削減の内訳を次のように定めました。
●工場や自動車などからの温室効果ガスの排出を1990年比1.5%増に抑える。
●森林による炭酸ガスの吸収、家庭の生活における削減努力など。

 排出量の多い鉄鋼、電力業界では目標達成は困難と考えていますが、都市ガス業界では種々の炭酸ガスの削減のための技術革新に取り組み、
自動車メーカ−は燃料電池車や低燃費車の開発に努力しています。
 一方家庭や事務所など民生部門での炭酸ガス排出量は日本全体の30%を占めるといわれますので、市民の積極的な取り組みがどうしても必要です。家庭などで節電につとめ、
ライフスタイルの見直し、エネルギー消費型の社会形態や価値観を変革することを本気で考えるべきときがきたのです。
環境省は家庭での対策を例で示し、もしこれらを完全に実行すると、炭酸ガスの削減は13%にものぼると試算しています。

ナガサキアゲハが長崎県から埼玉県にまで北上 …

 九州のチョウが本州に分布を広げています。寒さへの抵抗力をつけたという説もありますが、専門家はこれを否定、幼虫が食べる植物の増加なども関わった温暖化の証しとみています。北上する南方系の害虫に対しては、農作物への影響が懸念され、生態系が錯乱される事態も心配されています。
 温暖化を恐れるべきときである今、地域の行政も立ち上がらなければなりません。 さいたま市は5年以内に5%削減を決め、まず市職員の働く職場で電気、ガソリン、紙の使用量やごみの排出量を炭酸ガス量に換算し、また市が行政で使用中のパソコン約8000台の80%を昼休みの1時間電源を切った場合の電気量の節約をはかるなど、
具体的な削減への取組みを開始しました。
 その他の市町村でもようやく削減への体制作りがはじまったようです。朝霞市、志木市でも5ないし6%の目標を掲げ、新座市も近日中には数値を公表する予定です。
行政の具体的な行動は差し迫っています。
 ソーラーパネル(図3)による発電も普及してきました。1キロワットの発電は、100坪の樹木の炭酸ガス吸収量に相当すると言われています。
ソーラーパネルは市民が取り組みやすいアイテムですが、高価な先行投資となるため普及を妨げています。これに市の補助金を交付する朝霞市の取り組みには敬意を表します。
 行政の建造物に率先してソーラーパネルを取り付けることは、温室効果ガス削減のシンボルともなるのではないでしょうか。
つい最近沖縄の糸満市は2500枚のソーラーパネルで被った5階建て新庁舎を建設しました。

 京都議定書とは?

 1997年12月に、国連気候変動枠組み条約第3回締約国会議(COP3)京都会議で採択されたもので、以下の内容を定めています。

●先進国全体で、温室効果ガス6種類の排出量を、1990年レベルから平均5.2%削減する。共同達成方式で、日本6%、米国7%、EU8%。
●期間は2008年から2012年まで。
●削減目標値達成のため、次の方式を認める。

@ 吸収源として森林などの分を差し引くネット方式
A 先進国の間でプロジェクトを行う共同実施
B 途上国とのプロジェクトを通して削減するクリーン開発メカニズム
C 排出量取引

 これらのルールは、2001年10月〜11月にかけてマラケシュで開かれたCOP7において、ようやく法的文書としてまとめられたものですが、京都議定書として採択されるまでに10年を要し、さらに批准可能な形に整えるまでに4年かかっています。京都議定書が発効するには、先進国の90年における炭酸ガス排出量の、少なくとも55%を占める先進国を含む、55カ国以上の国が批准することが求められています。米国が抜けた今、日本の批准は欠かせないものとなっていました。今年8月南アフリカで行われる「持続可能な開発のための世界サミット(ヨハネスブルクサミット)」までに発効させるという公約を実現するために、国会で承認する必要があったのです。6月8日サミットの準備会合がインドネシアのバリで開かれましたが、残念ながら発展途上国が先進国の援助に不満をもって交渉は決裂しました。各国の大きな妥協が求められています。

 

参考となる環境省のホームページ

地球温暖化の日本への影響
http://www.env.go.jp/press/

地球温暖化解説
http://www.env.go.jp/earth/

 

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