前回に引き続き
「生分解性プラスチック」 その2

 前回述べたように、プラスチックと言えば便利なものなのに、捨てるときには厄介なもの。捨てても腐らない。
ところが土の中の微生物によって水と炭酸ガスに分解され、姿を止めなくなる「生分解性プラスチック」が開発され、
その市場が大きくなってきた。
 この天然由来のプラスチック素材は衣服やカーペット、フィルム、使い捨てのコップ、皿などの食器が製造される。
農業、土木の資材にも利用され、これらは土の中にすきで押し込めば良い。
写真に示すように、10cmくらいの地中に埋め、植木や野菜のように水をやる。
1月も経つとこのフィルムは土に還されて、もとの水と炭酸ガスになる。
 世界的な規模をもつ化学会社「ダウケミカル」と農産物を事業とする「カーギル」の合弁企業
Cargil Dow の設立・生産活動が始まった。
材料はトウモロコシ、そのデンプンから得られる糖を発酵させて乳酸にする。
これを化学的に重合させ(分子を繋ぎ合わせ)てポリ乳酸(PLA)に導く。
1. 植物よる糖の光合成 2. 微生物による発酵  3. ポリマーの化学合成
の3段階で生産される。

水をやると→キーワード土の中で分解する。
 

「生分解性プラスチック」 その3。

 理化学研究所高分子研究室の土肥義治博士は、カーギル・ダウの3段階の生産方法の代わりに
1、植物によって糖、植物油から光合成
2、微生物による生合成
の2段階合成で新しいポリエステルを生産する方式を開発し、
このポリヒドロキシアルカン酸 (PHA) は優れた生分解性プラスチックの素材となることを発見した。
 PHAは熱で加工しやすく(熱可塑性)、生体適合性を合わせもつ材料で、
しかも自然環境で速やかに分解されるので、医用材料としても有望である。
 土肥博士の研究はさらに前進して、このポリエステルを合成する微生物を単離(単独に分離)、
さらに遺伝子組み替えを行なってローコストの生産を目指す研究はいままさに白熱化し、国際的に注目されている。

 

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