からだを錆びさせないための食生活(1)

 ■酸素は毒素■
東京薬科大学薬学部   菊川 清見

 われわれの命は、空気中の酸素を吸入することによって、保たれています。
酸素はからだに取り入れられた食物に含まれる栄養素を、細胞の中で燃焼して、エネルギーを産生するために 重要な役割を果たしています。
 ところが、酸素はからだを錆びさせる毒素としても はたらくというのです。
空気中の酸素は鉄に付加して錆をつくりますが、ヒトのからだも錆びさせる、つまり生活習慣病を引き起こし、老化を速めるというのです。
 ローソクは20%の酸素を含む空気中で燃やすよりも、100%の酸素のなかで燃やした方が、大きな炎をあげて速く燃え尽きてしまいます。
ヒトのからだも多量の酸素を吸入すると、ローソクのように、一時的にからだの機能が高まりますが、速く燃え尽きてしまいます。
ほどほどに酸素を使った方が、多量に使うよりも生活習慣病にかかりにくく老化も遅くなるのです。
 酸素の消費量は食物の摂取量、運動量に深く関係しています。食物の摂取量が多いと、
それを燃やすために消費する酸素の量も増え、エネルギーも多量に産生され、それを使うために運動量も増加します。
 からだを錆びさせる酸素の消費量は、食物の摂取量と運動量によって決まってくるのです
。  ネズミとゾウを単位体重あたりで比較すると、ネズミは食物量、運動量、酸素消費量ともに多く、ゾウはその逆です。
 ネズミの寿命は3年、ゾウは90年です。同じネズミ同士の実験でも、普通の食物量で運動しないより、
普通の食物量で運動した方が寿命が長いが、食事制限した方がもっと寿命が長いことがわかっています。
ヒトにもこのことがあてはまり、多食と過度の運動は酸素消費量を増やし、からだを錆びさせます。
 ほどほどの食物とほどほどの運動が、からだを錆から守ることになります。
食物も運動も、個人の体格や年齢などによって違いますが、その人なりのさじ加減で調節すればよいと思われます。
 からだが錆びるのは、酸素そのもののせいではなく、酸素からからだのなかでできる活性酸素によるものです。
活性酸素がからだの成分を無差別にむしばむのです。
 酸素はからだのなかで栄養素を燃やすと、大部分は水になりますが、一部は水になりきれず活性酸素になります。
酸素の摂取量が多ければ、活性酸素の生成量も多くなります。
 動物には活性酸素を消し去るシステムがあり、このシステムによって一部の活性酸素は無毒化されていますが、
そのシステムのスーパーオキシドジズムターゼ(SOD)やビタミンEの濃度が高い動物ほど長命であることも、
活性酸素がからだを錆びさせる悪役であることを物語っています。


 

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