火力発電と塩素製造施設の新設
新聞の折込みで「朝霞浄水場常用発電設備整備事業」の「環境影響評価準備書説明会」が開かれることを知り、
記者は9月10日午後6時半、その説明会場の一つに赴いた。
説明会は朝霞市宮戸、志木市本町、さいたま市根岸、和光市松の木島町、
新座市野火止、戸田市美女木、富士見市水谷でも開かれた。
何故このように広範囲の住民に「準備書」の内容を説明するのか。まず記者の頭をよぎったのは、このことである。
もともと住民は自分の意思で居住地を定め、穏やかな日々の暮らしを営んでいる。
自分のまわりの利便性が良くなり、環境が良くなれば歓迎する。
したがって「環境影響の説明会」と聞けば、何か悪化する恐れのある計画がはじまるのかな、と身構えてしまう。
会場で配られた資料によると、この会の開催は、「埼玉県環境評価条例」で定められたプロセスの一つであって、
計画地から半径3キロメートルの地域を対象として設定された説明会であった。
私が驚いたのは、実に準備の行き届いた手回しの良い説明会で、
スライド映写を使い、この事業に関わる20人ものエキスパートが勢揃いで説明、
質問に対しての答弁は、まるで学術発表会のような雰囲気であった。質問には的確かつスピーディーに返答された。
住民の質問は不安を訴えるものが多かったが、動ずることもなく、筋を通すという姿勢に徹していた。
何故この事業が必要なのか、その理由は明快なものであった。
その1、地震に対しての対策 地震で電力の供給が止まると、
そして塩素の供給が止まると浄水の機能停止に陥るから自力の施設が必要である。
その2、行政運営の改善 インフラ整備、公共サービスに民間の資金と技術を導入して効率化を図る。
1999年に定められたPFI法(Private Finance Initiative)。日本の法律なのに英国で生まれた法律なので横文字。
水道料金で運営をまかなうという企業感覚の導入。
さて近隣に居住する一市民として、説明会ではすぐには思い浮かばなかったいくつかの疑問を列挙して参考に供したい。
その1、地震の際も浄水プロセスが作動したとして、できあがった飲料水を送るための配管は地震に耐えるのか?
その2、オゾン処理プロセスに転換しようとしているのに、塩素の製造(次亜塩素酸ソーダに変換される)は非常時でも必要なのか?
その3、火力発電のエネルギーに使うガスの供給は地震が起こっても大丈夫か? 石油の備蓄が必要になるのでは?
その4、発生する炭酸ガスの地球温暖化への影響は避けられないのでは?
その5、このような大きな事業計画は、進行する過程で地元(朝霞市、志木市など)との意見交換が行われたのだろうか?
聞くところによると、この計画はすでに昨年の10月、(株)日立製作所を優先交渉権者として選出し、契約を締結、
新たに日立製作所が出資して「朝霞・三薗ユーティリティーサービス」と称する企業が特別の目的をもって設立されていた。
メディアに対してすでに情報は配布されていたが、報道されなかったようだ。
関連する県、市の行政当局の対応も規範に沿っていたので、
特別に住民の側に立ってこれを受け止めようとされなかったのではなかったのでは。
法律的には守られても、その隙間を縫ってという進め方は素直には受け入れ難い。
当NPO「市民フォーラム」が掲げる市民の「公共参加」の考え方とは大きなへだたりがあるようだ。
いまや住民、市民の公共に対する参加の意識はだんだん高まりつつあって、
以前のように政治的な反対運動や闘争の影は潜んでいる。
ときには無心で公共に奉仕したい、寄与したいという願望を持つ人々も増え続けている。
年寄りも、会社員も、主婦も、若者も、
あらゆる年齢層の市民が政治的には党派に属さず、自分の主張を掲げる時代がきたようだ。
市民の意識改革は着々と進んでいる。行政を担う方々も、是非市民の方向から見る眼をもって貰いたいと思う。