からだを錆びさせないための食生活(3)

■ 食物中の多彩な抗酸化剤 ■

東京薬科大学薬学部 菊川 清見

 これまでに酸素が活性酸素になってからだを錆びさせる(本シリーズ1・本紙第5号)、食物中の不飽和脂肪酸は、活性酸素によって酸化されてからだの錆びを防ぐ(本シリーズ2・本紙第6号)という話をしました。しかし、酸化された不飽和脂肪酸も消し去らないと傷害性は残っています。

 からだのなかの活性酸素や酸化不飽和脂肪酸を消し去る仕組みを抗酸化システムといいます。
 抗酸化システムには、からだのなかで作られるものと食物から摂取されるものとがあり、これら多数の物質がネットワークを作り、
からだが錆びるのを防いでいるのです。からだのなかで作られる抗酸化剤には、活性酸素や酸化不飽和脂肪酸を分解するSOD、カタラーゼ、コエンザイムQ、リポ酸、グルタチオンがあります。

 からだでは作られず、食物から摂取されなければならない抗酸化剤は、ビタミンE、ビタミンC、それにセレンです。ビタミンEは抗酸化剤のキング、ビタミンCは抗酸化剤のクイーンといわれるほど重要です。

食物から摂取されるべき量は一日でビタミンEが8〜10ミリグラム(上限600ミリグラム)、ビタミンC100ミリグラム(上限なし)、セレン45〜60マイクログラム(上限250マイクログラム)とされています。

 ビタミンEは小麦はいが、西洋かぼちゃ、ウナギなどに、ビタミンCは多くの野菜や果実に含まれており、セレンは通常の食物に
微量の必要量が含まれています。

 にんじんのベータカロテン、トマトのリコピンなどのカノテノイド、赤ワイン、茶葉、リンゴなどに含まれるポリフェノール類、
ターメリックに含まれるクルクミンも食物由来の抗酸化剤で、ビタミンEやビタミンCの応援団を作っています。からだのなかで作られる抗酸化剤と、ビタミンEとビタミンCが中心となって複雑なネットワークを作り、からだの錆びを防いでいるのです。

 ところで、からだの錆びを防ぐ抗酸化剤は、基本的には食物から摂取するものです。純品のサプリメントからの摂取もよいとされるのはビタミンEとCでしょう。しかし他の抗酸化剤をサプリメントから摂取するのは思わぬ危険性をはらんでいます。食物から摂取する限り過剰に摂取する恐れはないし、またサプリメント中の予期しなかった不純物を摂取してしまうこともないのです。数年前、アメリカ、フィンランドでベーターカロテンを多量使用した臨床試験では、喫煙者の肺がん死亡率が上昇したと報告され、話題になりました。用いたベーターカロテンの品質が不純だったのではないか、使用量が多すぎたのではないかなどと推測されています。

 ビタミンE、C以外の抗酸化剤のサプリメントや薬剤にはまだ定まった試験結果は出ていません。また、SOD活性をもった食品がいわゆる「健康食品」として売られていますが、SODはからだのなかで作られたものでないと効き目はないのです。厚生労働省認可のおよそ300品目ある特定保健用食品のなかにも、まだ抗酸化剤を成分とする商品がないのも、抗酸化剤の品質や使用量に定まった見解がないことを物語っています。

 からだの錆びを防ぐための抗酸化剤は、多種の食物から片寄ることなく摂取することが好ましいのです。

■食物から摂る抗酸化剤■

キングとクイーン 
ビタミンE(小麦はいが、
西洋かぼちゃ、ウナギなど)
ビタミンC(野菜、果実)

応援団 
カロテノイド(人参、トマト)
ポリフェノール(赤ワイン、茶葉、リンゴ)
クルクミン(ターメリック)


◇サプリメントからも
    摂れる抗酸化剤◇
ビタミンE
ビタミンC


戻る