慶応高寮跡地の
開発計画
‐三者協議の行方を追う‐
慶応義塾が売却した志木高校の土地については、すでに本紙6、7号で取り上げた。
敷地約一万四千平米、三百四十戸の建設という大規模な開発であるが、このような事業を進めるに当たって、業者は行政への手続きを優先させ、住民への説明は手短かにという手法が慣例となっていた。しかし今回は違う。三者対等の協議を基本とすること、同時に「緑のワークショップ」を開くなどのプロセスが取り入れられた。すでに叩き台のプランに大きな変更を迫るといった場面もでてきた。
年末から二月末までに、事業主である三井不動産、三菱地所と市役所、住民グループとの三者協議は五回に及び、「緑のワークショップ」も二回、近隣住民との話合いも頻繁に行われた。その結果、敷地内に充分なパブリックスペースを確保し、斜面林は一体として保存する方向の計画が進んでいる。新しい居住者とともに、非居住者も自然の移り変わりを楽しめるようなプランが現実味を帯びてきた。
しかし、新しい高層の建物による日照、景観などへの影響は、その住宅と現場との位置関係によっては居住者の間で異なったものとなる。
北側、東側の居住者は、計画中の東棟の建設、駐車場の設計に反対して、市長と事業者に陳情書を提出した。
計画中の建物は法規上で許される容積を満たして高さは十四階となり、空を覆うことになる。如何に知恵をしぼっても、建造物全体の規模を圧縮することは、経済が許さない。
志木市の「緑のまちづくり」の重要な拠点だった現地を、もっと早く開発の規制をしておくべきだった。志木市と売主の慶応義塾に対して、その無念の思いはつのる。