転機の教育を考える
学習塾の栄光
三月になると、学習塾には、私立中学、私立高校合格者のビラが一斉に掲示される。一人で複数の中学、高校に合格した者もいる。進学塾は賑々しく、私立学校への進学を果たした生徒の笑顔が並ぶ。大学への進学に有利な私学への合格発表は、受験生の親にとって、将来への夢を存分膨らませる至福のときだ。
なぜ私塾は親達に頼りにされるのか
ある学習塾のベテラン教師は「公立の学校では学習指導要綱にしばられ、また雑用に追われて教えたいことも教えられない」という。学習塾ではしばしば理解する能力によってクラス分けされる。生徒が分からないときには、その生徒の特徴に踏み込んで解析する。そして解決を目指して新しい指導法にアプローチする。
家庭教師の指導はときによっては学習塾に優る。生徒の個性に深く踏み込んで、適切に指導する優秀な家庭教師も少なくない。
「何故日本では小中学校から熱心に私塾に通うのか」「学習指導の国家資格もないのにどうして私塾ははやるのか」。昨年アテネで開かれた教育シンポジウムでは、必要悪などといわれながら、日本の子どもの基礎学力づくりを担ってきた私塾、家庭教師の存在は、かつてない脚光を浴びた(朝日新聞02年7月28日の記事を参照)。
公立学校に「ゆとり」が取り入れられた結果として学習時間、内容が削減されてしまったいま、親達の不安はいやが上にも増幅されている。
公立校の構造改革
文部科学省をはじめ、教育に携わる方々は、最大の課題である「学力の向上」に向かって大きな努力を払いつつある。その方法として、多様な新しい取組みを提案しようとしており、例えば六三連続の九年制、学区の壁を取り除く自由化、脱画一化を進めるための教育特区などがある。従来考えられなかったような大胆な内容であるが、改革の流れの核心は、競争原理の導入でなければならない。
学力低下の問題では、教員の力がしばしば問われる。公立校の教員は、過ちを恐れず大胆な改革に取り組むべきだ。
教育も財力次第?
学習塾や家庭教師に頼らなければならないとすれば、満足な教育は財力次第ということになる。
東京大学を例に合格者の出身校を調べたデータによると、公立高校からの合格者は減り、私立高校からの合格者は増え続けている(朝日新聞02年10月7日の記事を参照)。小中学校、高校の十二年間にかかる教育費は、全部私立校に進学した場合、全部公立で学んだ場合に比べて二倍以上になるという。塾や家庭教師に掛かる費用を含めると、金額はさらに膨らむ。
教育を取り巻く環境に対して危機感を持つべきときのように思われる。
学習塾に通う子供たち
学習塾前の合格発表