からだを錆びさせないための食生活(4)

■ 生活習慣病を防ぐ ■

東京薬科大学薬学部 菊川 清見

 わが国の平均寿命は世界一であるとはいえ、脳血管疾患、心疾患、がんによる死亡率が全体の6割を占めており、これらの疾患につながるとされる高血圧、糖尿病、肥満、高脂血症や骨粗しょう症も多くの人がかかっています。
 これらの疾患は40歳前後から発症するのでかつては「成人病」といわれていましたが、若年からの生活習慣が密接に結びついていることがわかり、最近では「生活習慣病」と呼ばれるようになりました。
 生活習慣には、喫煙やアルコールの飲用もありますが、最も重要なのは、食習慣と運動習慣です。
 わが国では現在、健康づくりのため「健康日本 」をかかげ、新しい「食生活指針」の策定、学校教育における「食教育」の充実を図ることにしています。また国立がんセンターでは「がんを防ぐための十二ヶ条」を示し、がん予防を図っています。いずれにおいても、若年からの食習慣と運動習慣が生活習慣病の予防に重要であることが盛り込まれています。

 食習慣では、規則正しく、適量の、バランスのとれた食物の摂取が奨められています。そのなかで、脂肪摂取を減らす、食塩摂取を減らす、カルシウムを充分に、野菜摂取を増やすことが推奨されています。

 戦後の日本の食生活は徐々に欧米化して脂肪摂取が増加し、その結果がんを始めとする生活習慣病が増加しているといわれています。さらに、本シリーズ2(本紙第6号)で述べたように、脂肪の摂取は量だけでなく、その質も生活習慣病に深く関わっています。脂肪の摂取は量とともに質も重要なのです。高食塩型の食習慣も高血圧を引き起こし、他の生活習慣病の引き金になっています。食塩は一日6gがよいとされていますが、日本人は平均的にその2倍以上も摂取しているのが現状です。これとは逆に日本人に最も不足しているのがカルシウムです。カルシウムは一日600〜700ミリグラム必要とされていますが、一定量以上を摂取すればよいのではなく、ビタミンDなど吸収を促進したり、リン酸塩など抑えたりする食物成分の摂取についても注意をはらうことが必要です。
 カルシウムの充分な摂取は骨粗しょう症の予防に必要です。野菜などの植物性食品には、本シリーズ3(本紙第7号)でも述べたように、様々なビタミンや抗酸化剤が含まれているので、多種の野菜や果実を摂取することによって、からだの中に抗酸化剤のネットワークが広がり、からだの酸化を防いで、生活習慣病を防ぐことにつながるのです。

 運動習慣も生活習慣病の予防にとって重要です。食物摂取過多による肥満は他の多くの生活習慣病につながっています。
 肥満に陥らないためには、食べ過ぎない食習慣とともに、蓄積した脂肪分をエネルギーに換える運動が必要です。赤筋を動かす運動がよいとされています。 しかし、食べ過ぎによる肥満の解消のために、激しい運動を繰り返すことは、本シリーズ1(本紙第5号)でも述べたように、活性酸素を多量に発生させることになり、からだの錆を助長することになります。

 生活習慣病を防ぐ若年からの生活習慣は、食べ過ぎないようバランスよく多くの種類の食物を食べ、酸素消費量を極端に高めないよう適度な運動をすることでしょう。(完)

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