放置自転車を一掃したい…という
行政の願いを市民はどう受け止める?

 志木市、新座市では、志木駅の東口、南口付近の路上に放置される自転車に手を焼いている。
これまで両市では、市営の無料、有料駐輪場を駅周辺につくり、あるいは私営駐輪場の利用を呼び掛けてきた。
しかし路上駐車が減少する傾向は一向に見られない。
そこで一斉に「強制撤去」 する手段がとられてきた。大量の駐輪の列が目に余るようになってきたのだ

 

 過日、志木市ダイエーの前、柳瀬川駅前で徹底的な強制撤去が行われる。そのとき放置自転車は一掃された。しかし翌日には、ダイエー、ららぽーと前の市道などに、何時もと変らず、夥しい放置自転車の列ができ上がった。まさにいたちごっこの感は深いのである。
 強制撤去は業者への委託で行われ、撤去された自転車と原動機付きバイクは、指定の場所に保管され、これを引き取る場合、両市では、自転車二千円、バイク三千円を徴収して持ち主に返却する。わずかな収入は焼け石に水、市の財政に撤去は大きな負担となる。

 車道や歩道、広場に停車した自転車、バイクは、違法な駐輪であること、歩行者の通行を妨げ、危険を生ずることが、取締りに当たる行政の建て前である。一方住民の多くは、違法とは知っても駐輪する。もっぱら利便性のためにである。車道に止める自動車とは異なり、警察で取り締まられることも無い。
 
 ある日、予告を知ってか知らずか、路上に駐輪した自転車を、運搬車両に山積みにして強制的に撤去する。この非情な光景を目のあたりにした方は、一体どんな感想をもたれただろうか。当然の成り行きと取られるだろうか。自転車で駅付近に買物に来て、お店の近くの路上に駐輪したところ、買物が済んで取りにきたら自転車が撤去された、あるいは通勤通学のために時間が無くてつい駅前に駐輪したが、夕刻志木駅に降り立って、自分の自転車が撤去されたことに気付いた。止むを得なかったと自分に言い聞かせて、後日収容場所に出向き、納付金を払って自分の愛車を引き取ることになる。
 
 放置自転車の問題は、都市の周辺でどこでも起こっている。対策に取り組む自治体は、それぞれ知恵をしぼり、たとえば共有自転車の利用がある。駅に向かう上りと、駅から市内へと向かう下りの利用者をネット化し、シェアする千葉県市川市の例が最近話題になっている。

 志木駅周辺の公営駐輪場の収容台数は、有料無料併せて志木市三千、新座市四千台、これに私営および商業施設の台数を加え、路上駐輪まで含めると、一万台を超えることは間違いない。

 志木市では、ワーキンググループを立ち上げて根本的な解決を探ろうとしている。解決策を考えるために、防災交通、都市整備課のほかに、教育委員会、福祉担当者を加え、商店、スーパーなどからの参加を求め、罰則の導入も検討するという。取締りの強化や懲罰にのみ走らず、また掛け声に終わらず、啓蒙だけに走らず、また個人のエゴだけを断罪することなく、市民の利便をも充分考慮した方向で論議を展開されよう関係者に求めたい。


■志木駅東口の駐輪、駐車をカメラの目で見ると■

写真1 自転車の荷台の中に、市の委託を受けて投げ込まれた「放置自転車等の一掃にご協力を!」という行政の啓蒙のための「ちらし」を見て、「これなーに?」といぶかる高校生。ダイエー志木店前の路上で
写真2 志木駅前「丸井」の前の広場は、志木市が所有していて、その地下一階に市営の駐輪場がある。入口、出口はスロープになっているが、バイクを押して出入することは容易ではない。入口に受付があって、料金百円を払う。月極めは自転車千八百円、バイク三千円(学割あり)、ただし取材に赴いたとき月極めは満杯であった。
写真3 地下につくられた駐輪場は、地上とは打って変わった光景だ。自転車二千台、バイク二百台の規模をもつ。


写真4 この市営の駐輪場の上部は、バスの発着、タクシーの乗り場になっていて、昼間は客待ちのタクシーとその運転手の姿だけが目に入ってくる。
写真5 志木駅南口、新座市の「ほっとぷらざ」前の広場では、タクシーが待機する隣のスペースは新座市営の有料駐車場で、さらにバスの発着にも使われる。自転車の放置に対しては、常時五人の監視員が目を光らせていて、直ちに注意し、指導するという厳格さだ。

 

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