かぜの常識はうそ?ほんと?



毎年冬になるとかぜが流行る。なぜか。

 冬にはかぜの患者が増えることは、医療機関でなくても良く知られていることである。
 その一つは、多くのかぜのウイルスの生存に、冬の低温が好適なこと。しかもかぜのウイルスは冬の低い湿度を好む。例えば、湿度が20%のとき、かぜのウィルスを摂氏21ないし24度の空気にさらした実験では66%が生存しているのに、湿度が50%以上では、6時間後に数%しか生存していないと報告されている。気温が低く、湿度も低い冬は、ウイルスにとって好ましい環境なのだ。
 その二に、冬は部屋を閉め切りがちになること。かぜのウイルスの多くは、患者のくしゃみや咳で飛散し、そのまま飛沫が他人の呼吸器に吸い込まれたり、あるいは乾燥した小さな粒子に付着したウイルスが、口や鼻から吸い込まれ、飛沫核感染で感染する。閉め切った室内は、粒子が浮遊していて、感染する確率は高まる。
 その三は、ヒトの呼吸器機能は、冬になって低下すること。感染に対して防御の機能を果たす呼吸器の粘膜繊毛輸送は、低温では機能が低下すると同時に、抗ウイルス作用をもつインターフェロンの産生、白血球の活性、抵抗産生能力も寒さによって影響されるものと推測されている。             

かぜとインフルエンザは違うもの?

 かぜにははっきりとした定義がないが、くしゃみ、鼻水や咳が出るなどの呼吸器症状と、発熱、頭痛、倦怠感などの全身症状を起こす「かぜ症候群」というのが、一般的のようだ。
 原因はほとんどの場合ウイルス感染であるが、細菌の感染によるカゼも、10ないし20パーセントにのぼるという。
 インフルエンザはこの定義からかぜの一種といえるが、インフルエンザウイルスの呼吸器感染によるもので、呼吸器症状に、突然の発熱や強い倦怠感などの全身的な症状を伴う。かぜの中でももっとも重いものと認識されている。

かぜは人にうつすと治る?
 
 人にうつすと治るということは、科学的にはナンセンスである。
 ただし実際にそんな経験をした方は少なくないようだ。これには、かぜの潜伏期間と治療の期間とが絡み合っているようだ。
 かぜは、咽喉や鼻粘膜で増えたウイルスが、くしゃみや咳によって飛散して伝染する。咽喉などにウイルスが多く、咳やくしゃみの頻度が高い時期、すなわち症状の重いときに感染し易い。
 例えば、Aさんの症状がピークのときにBさんはすでに感染している。Bさんは数日の間は症状が現れないが、その後に症状は出現する。丁度そのころAさんは症状が軽快している。つまりかぜの潜伏期間と治癒期間が、いずれも2、3日であることが、「うつすと治る」ような錯覚を生じたのである。

 本文は、日経ドラッグインフォメーション、2002年11月10日、61号(田島健、坂井恵氏担当)の「かぜ患者への服薬指導」および
土川内科小児科院長、土川氏が運営するホームページ(http://www.ums.co.jp)を参考にさせて戴きました。


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