地方財政削減/三者協議/放置自転車

地方財政を二十%削減
地方への補助金削減と税源移譲の方針決まる

 地方税財政の「三味一体の改革」は、小泉首相の最終的な裁定によってようやく決着した。国の財政が落ち込むとき、国から地方への補助金を削減し、地方交付税を見直す代わりに、税を地方に移譲するという三つを同時に改革しようというものだ。
 国から地方への補助金は一般会計で十七兆四千億円あまり、特別会計を含めると二十兆四千億円にのぼるが、今回の合意した案では、公共事業向けを含めて、その二割を三年間で削減するというもの。
 一方国から地方への税源の移譲については、所得税や消費税などの基幹税も対象とする方針だ。税源移譲の規模は。小泉首相の裁断で義務的経費の削減分については、その全額相当、その他の経費については、八割相当の税源を地方に移譲することが固まった。

 この改革は、昨年六月の閣議で決定された「骨太の方針」第二弾の柱として盛り込まれたもの。一年以内という期限付きで検討が始まり、小泉首相の二つの諮問機関、地方制度調査会(諸井虔会長)、地方分権改革推進会議(西室泰三議長)は、鋭意審議に当たってきたが、改革案の作成に手間取り、また関連する省庁の利害がからんで、議論は迷走した。

 二つの対立する意見は、地方分権を優先するか、あるいは財政を重視するか、にある。分権派はこういう。地方が自由に使える財源を増やせば、地域の実情に応じたサービスができ、新しいものへの挑戦が始まれば、経済を活性化して、引いては国の経済にも寄与する。他方財政派はいう。現在の国の税収入は落ち込み、老齢化による社会保障の負担は増加するため、借金は膨らむ一方だ。自治体間の財政力の格差も広がる。そこで税の移譲は慎重に、決して急いではならないと主張する。

 改革案はようやくスタートしたが、具体的な数値目標はまだ示されず、今後の政局によっては、実施までには手間取ることも予想される。政党、中央・地方の官僚をはじめ、地方自治体などからも多くの意見が出されることは間違いない。

その行方を注視しながら、地方分権の確立と地方財政の真剣な改革について考えよう。市民も積極的に意見を発信すべきだ。

緑のまちづくり
慶応高校寮跡地の開発で三者協議

大規模の開発では、法規上提供公園が義務付けられる。慶応高校寮跡地の開発では、業者が自発的に敷地を上乗せすることになった。ここに残された貴重な斜面林を中核として自然公園をつくる、という協議が進んでいる。行政と市民の力で「ふれあいの森」をつくる計画だ。
前号ですでに紹介した「慶応高校の緑に想いを寄せる会」は、その取り組みの一つとして「緑のワークショップ」を始め、すでに7回を重ねた。近隣の住民のほか、市民グループNPO「エコシティ志木」のメンバーや、開発業者が依頼した植物設計担当者、都市開発に当たる行政の方々は活発な協議を続け、どんな公園をつくるべきか、その姿を追求している。
斜面林を生かして、いまあるままの環境を維持する、遊具など置かずに、自然の観察ができるものにしたい、という意見が出た。下草刈り、整枝はどうするか、などは課題だが、すでに志木市が運営する「ふれあいの森」をモデルにしてはどうかという提案もあった。志木市には、地主から借用して開設した「ふれあいの森」がいくつか設けられて、「エコシティ志木」などのグループがサポートしている。市民には好評である。
 敷地が道路より高いので、段差ができるが、バリアフリーでなくてはならない、しかしコンクリートを打つようなものではなく、環境にやさしい設計にしたい。かつて敷地が接していた「野火止用水」の面影が偲ばれるような設計はないか、などなど…
 セキュリティーラインの線引き、マンション居住者との調整は、残された大きな課題である。しかしこれらの問題を乗り越え、市民の想いを緑のまちづくりに生かしたい。
写真は寮跡地の開発はいま。貴重な斜面林を望む。ほぼ中央に、移植されたかつてはシンボルだった大銀杏が見える 

放置自転車を一掃したい…という行政の願いを市民はどう受け止める?

 志木市、新座市では、志木駅の東口、南口付近の路上に放置される自転車に手を焼いている。
これまで両市では、市営の無料、有料駐輪場を駅周辺につくり、あるいは私営駐輪場の利用を呼び掛けてきた。
しかし路上駐車が減少する傾向は一向に見られない。
そこで一斉に「強制撤去」 する手段がとられてきた。大量の駐輪の列が目に余るようになってきたのだ。  

 過日、志木市ダイエーの前、柳瀬川駅前で徹底的な強制撤去が行われる。そのとき放置自転車は一掃された。しかし翌日には、ダイエー、ららぽーと前の市道などに、何時もと変らず、夥しい放置自転車の列ができ上がった。まさにいたちごっこの感は深いのである。
 強制撤去は業者への委託で行われ、撤去された自転車と原動機付きバイクは、指定の場所に保管され、これを引き取る場合、両市では、自転車二千円、バイク三千円を徴収して持ち主に返却する。わずかな収入は焼け石に水、市の財政に撤去は大きな負担となる。

 車道や歩道、広場に停車した自転車、バイクは、違法な駐輪であること、歩行者の通行を妨げ、危険を生ずることが、取締りに当たる行政の建て前である。一方住民の多くは、違法とは知っても駐輪する。もっぱら利便性のためにである。車道に止める自動車とは異なり、警察で取り締まられることも無い。
 
 ある日、予告を知ってか知らずか、路上に駐輪した自転車を、運搬車両に山積みにして強制的に撤去する。この非情な光景を目のあたりにした方は、一体どんな感想をもたれただろうか。当然の成り行きと取られるだろうか。自転車で駅付近に買物に来て、お店の近くの路上に駐輪したところ、買物が済んで取りにきたら自転車が撤去された、あるいは通勤通学のために時間が無くてつい駅前に駐輪したが、夕刻志木駅に降り立って、自分の自転車が撤去されたことに気付いた。止むを得なかったと自分に言い聞かせて、後日収容場所に出向き、納付金を払って自分の愛車を引き取ることになる。
 
 放置自転車の問題は、都市の周辺でどこでも起こっている。対策に取り組む自治体は、それぞれ知恵をしぼり、たとえば共有自転車の利用がある。駅に向かう上りと、駅から市内へと向かう下りの利用者をネット化し、シェアする千葉県市川市の例が最近話題になっている。

 志木駅周辺の公営駐輪場の収容台数は、有料無料併せて志木市三千、新座市四千台、これに私営および商業施設の台数を加え、路上駐輪まで含めると、一万台を超えることは間違いない。

 志木市では、ワーキンググループを立ち上げて根本的な解決を探ろうとしている。解決策を考えるために、防災交通、都市整備課のほかに、教育委員会、福祉担当者を加え、商店、スーパーなどからの参加を求め、罰則の導入も検討するという。取締りの強化や懲罰にのみ走らず、また掛け声に終わらず、啓蒙だけに走らず、また個人のエゴだけを断罪することなく、市民の利便をも充分考慮した方向で論議を展開されよう関係者に求めたい。

志木駅東口の駐輪、駐車をカメラの目で見ると


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写真1 自転車の荷台の中に、市の委託を受けて投げ込まれた「放置自転車等の一掃にご協力を!」という行政の啓蒙のための「ちらし」を見て、「これなーに?」といぶかる高校生。ダイエー志木店前の路上で
写真2 志木駅前「丸井」の前の広場は、志木市が所有していて、その地下一階に市営の駐輪場がある。入口、出口はスロープになっているが、バイクを押して出入することは容易ではない。入口に受付があって、料金百円を払う。月極めは自転車千八百円、バイク三千円(学割あり)、ただし取材に赴いたとき月極めは満杯であった。
写真3 地下につくられた駐輪場は、地上とは打って変わった光景だ。自転車二千台、バイク二百台の規模をもつ。
写真4 この市営の駐輪場の上部は、バスの発着、タクシーの乗り場になっていて、昼間は客待ちのタクシーとその運転手の姿だけが目に入ってくる。
写真5 志木駅南口、新座市の「ほっとぷらざ」前の広場では、タクシーが待機する隣のスペースは新座市営の有料駐車場で、さらにバスの発着にも使われる。自転車の放置に対しては、常時五人の監視員が目を光らせていて、直ちに注意し、指導するという厳格さだ。