総合学習がスタート/消えたハケノヤマ

小・中学校で「総合学習」がスタート

文部科学省によって、今年の4月からいよいよ小・中学校の教科として「総合的な学習の時間」が組み込まれることになった。
高校では来年2003年からはじまる。
「総合学習」というキーワードが登場した背景は何か、そして目指す方向は…。
「総合的な学習の時間」はどうして生まれたか。このことについてまず考えてみよう。
  1. 豊かな人間性、社会性、国際化の自覚を期待して。
  2. 自ら学び、自ら考える力を育成し、自発性を期待して。
  3. 週5日制のゆとりを生かし、好奇心、探究心をもって、オリジナルな発想、独創性に期待して。
  4. 歴史の流れを見つめ、また国際協調の意識を高める。
「総合学習」を『調べる』学習という方がいる。自分で調べるプロセスが、もっとも大切なポイントである。
学校で学ぶ、例えば、国語で漢字を習い、算数で計算を学ぶとき、覚えることがまず大事なことだ。
覚えたことを確かめるテストで良い点数を挙げる、しかしこれだけでは物足りない。
この漢字は一体いつから使われるようになったか、この計算は実際の社会でどのように役立っているのか、
もしこのような疑問を持ったら、テストが終わった後も今度は自らの意志、方法で質問したり、納得がゆくまで積極的に調べてみる。
テーマを決め、学校の外にも出て専門家にたずねる、図書館に行って資料を探し、本を読み、インターネットを使ってデータを調べる、
博物館で展示を見学するなどなど。文字を並べて表示するワードプロセッサーや、計算を土台とした会社の帳簿の仕組みを実際に体験するといったところまで進むと、これはもう「総合学習」の核心に迫りつつあると言ってよい。
調べたことをまとめて発表することもプログラムの中に入っており、これらの一貫したプロセスは、いままで高校、大学で行われていた卒業制作や、研究論文作成のいわばミニチュアとも言えるもので、それらとほぼ同じコンセプトの教科が小学校、中学校に組み込まれることになったのは画期的なことである。
学ぶことは「自分で調べ、自分で考える」ことであるという未来志向型の学習はいよいよ4月からスタートする。  
ただし、「基礎教育」こそ重要であって、総合学習によって、基礎学力が低下するのではないか、と案ずる方々は少なくない。 
当然のことではあるが、基礎無しに総合は語れないことをもう一度確認しておこう。
今までの小学校、中学校の教育は、「覚えなさい」、テストがあるから「暗記しなさい」という、
生徒は無条件で先生に従い、言われる通り行動しなさいという仕組みの中で進められてきた学校教育の方向性を急に変革することは、学校関係者、教職員、父兄の誰もが何かしらの当惑を持たせることになるに違いない。
それに、今年スタートしたからといって、すぐ良い結果が出るとは思われない。
このことに配慮した文部科学省は、WEBサイト「総合的な学習の時間応援団」を立ち上げて各学校の試みを積極的に紹介し、参考資料として使うように呼びかけている。

参考サイト

文部科学省 「総合的な学習の時間応援団」

消えた「ハケの山」

3月23日、朝霞市の代表的な「武蔵野の雑木林『ハケの山』」が姿を消した。
「ハケの山」は、東武東上線下り電車が朝霞台駅を出て間もなく、志木駅に差しかかる手前、線路脇に広がった広大な雑木林である。
 この地域の住民はもちろん、通勤する人々がみな窓越しに眺めてはその景観に見とれるほど、季節感のある美しい林だった。
この近隣、朝志ヶ丘に住む住民にとって、間近に自然の息吹を感じられるこの山林はかけがえのない財産だった。
「朝志ヶ丘・ハケの山」は、朝霞市が平成9年に発行した朝霞市史をつづった 「あさかの歴史」の巻頭グラフにも、「武蔵野の雑木林」として、その写真が掲載されている。
住民たちはこの山林が伐採されるなど夢にも思わなかったろうし、ましてそこに高層マンション群が建設されるなど、驚愕に近い通告だったろう。

実はこの山林を永年にわたって所有・管理してきた地権者が、相続税の納付のために売却することを決めたのだった。
それを知った住民の有志が朝霞市にこの土地を買い取り、環境を守りながら公有地として活用するよう、願い出た。
それを受けて朝霞市では予算65億円の拠出を決め、地権者と交渉したが、大手不動産建設業者数社が連合して買収に動き出し、昨年8月中旬、「ハケの山」は市の提示額を上回る80億円という金額で、大手不動産建設業者の手に渡ることとなった。
 このままでは25000?という広大な雑木林のすべてが伐採され、その代わり4棟の高層マンションが建設されてしまう。
自然環境が破壊されるだけでなく、住民の生活環境が一変する。
住民たちは「雑木林を守るシンポジウム」を開催し、「未来に残そうハケノヤマ」をスローガンに署名を集め、市当局および県当局に陳情書を提出するとともに、不動産建設業者との話し合いを続けてきた。 この間の動きは今年1月下旬以来、「埼玉新聞」に10数回にわたって報告されている。
しかしこの山林に境を接している志木、朝霞、新座各市のどれだけの住民がこれらの動きを知っていただろうか。
シンポジウムのメンバーは3月13日には、東京地方裁判所に伐採禁止命令仮処分の申し立てを申請。ところが、19日に朝霞市が建設業者に開発許可を出す。
市の開発許可を受け、20日に伐採開始。23日には「ハケの山」は姿を変え、やがて高層マンション群に変貌を遂げるのである。

マンションが建設されれば、400台もの膨大な数の車が増える。周辺の道路は今まで通りの狭い道。
渋滞は避けられず、空気汚染もまぬがれまいと近隣住民の不安は大きい。
 4月6日、朝霞リサイクルプラザにおいて、伐採に抗議する報告集会が開かれた。近くの市民が集まり、経過報告を受けた。
最後に今後も建設業者と朝霞市に強く抗議していくためのアピールを発表した。
雑木林を守るネットワークの活動に関しては、伐採に至るまでの一連の経過、ハケの山の景観を記録・編集した写真集が納められているホームページが作成されている。
まもなく今後の活動の方向性も記録されるはずである。

「ハケの山」の問題は朝志ヶ丘近隣の住民だけの問題ではないことを自覚し、市民の力で自然環境を守るにはどのような方法があるか、思索を重ねる必要があるだろう。

かつてこの地域一帯は雑木林で覆われ、江戸時代には徳川将軍家の鷹狩場だった。
戦前には電力研究所(転じて慶応義塾大学獣医学部、現在は高校となっている)が開かれ、その背後には朝志ヶ丘住宅街が開発された。
一方ハケの山の南端には高層の公団住宅が、北側にもマンションが建設されて、その都度伐採が続き、雑木林は狭められてきた。
この機会に私たち市民、いや国民ひとりひとりが、貴重な美しい自然や環境や歴史的な建造物などを寄付金で買い取ったり、あるいは寄贈、遺贈で入手して保全、維持管理し、広く公開することで、次の世代に残していくといった市民運動(ナショナル・トラスト運動)に関して、勉強してみることは有意義なことだと思う。
「雑木林を守るネットワーク」ホームページ

「社団法人日本ナショナル・トラスト協会」 ホームページ

「ハケの山」の名前の由来
「ハケの山」の「ハケ」は水はけの「はけ」が語源のようです。
本文にも出てくる『あさかの歴史』にも「黒目川が削った崖状になっている台地と低地の境目にあたる、ハケというところには〜」という記述があり、地形的に急に水はけがよくなる場所を差すようです。朝霞市浜崎一帯はこの「ハケ」に当たり、その地の有力者の家をいつからか「ハケの家」と呼ぶようになったとのこと。
そして、その有力者が所有する山林を「ハケの山」と呼ぶようになったといいます。
(朝霞市教育委員会で市史編さん室長を務められた広野淳さんのお話しから)