地方立て直しの主役は誰なのか/みなに好まれるのか高層ビル/四市合併協議打ち切り<

地域を立て直す主役は一体だれなのか?

中央から地方へ、地方分権の時代

 中央の政党の力が取り仕切る時代から、地域を後ろ立てにした脱政党の首長が続々と生まれている。中央から地方へ、地方分権の時代へと変貌を見せている。地域の担い手は一体だれになる?

 地域の活性化に熱心な政治家は少なくない。しかし地方の首長は、自分の思い通りにことを運ぶことには熱意をもっているが、しばしば自己満足に陥りがちだ。
 私たちが、地域の議会のために一人の議員を信頼し、選出しても、議員さんが何人か集まらないと議案の提出はできない。役所の職員も、しばしば議会対策に走り、苦情を言う市民の対策に走ったり、一体何をしようとしているのか、行き詰まりの様子が見えてくる。これまではピラミッド型の上意下達の方式であったが、これからは、下から上へ、市民の一人一人の思いが行政に生かされるような改革が必要だ。首長の公約の点検、評価も市民によって常に行われるべきだ。

 多様化しつつある地域の問題の解決に向かって、新しい組織が注目されている。自発的に組織化された非営利活動法人NPOがそれ。NPOはいま、疲弊した既存の組織に代わる新しいエネルギー源として期待を担うようになってきた。
 地域にはあらゆる課題があって、NPOはいくつあっても足りないくらいといわれる。少々大袈裟のように聞こえるかもしれないが、例えばイギリスには約二十五万人の人口当たり、一千ものNPOがあって活動しているという。

 非営利を基本とする民間の組織は、九十五年に起きた阪神大震災のさいにボランティアが重要な役割を果たしたことを契機として注目され、九十八年にNPO法が施行された。全国のNPO法人はいまや月二千件のペースで増えているという。
 すでに本紙でも取り上げたように、NPO法は、活動を「不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与する」活動とし、具体的に十二の分野を規定している。現行では、つぎの活動分野がある。
 保険・医療・福祉、社会教育、まちづくり、文化・芸術・スポーツ、環境保全、災害救援、地域安全、人権・平和、国際協力、男女協同参画、子どもの健全育成、NPOの連絡、助言

 さていよいよNPOは第二世代に入ることとなった。
五月から加わる五分野として
情報化、科学技術、経済活性化、職業能力の開発・雇用機会の拡充、消費者保護がある。

 要件を満たしていれば、国や都道府県は書面審査でNPOに法人格を与えるが、行政が関与する余地を少なくし、市民の自主的な判断を重視するため、情報公開を通して市民が相互に選択、監視する仕組みになっている。公的な信頼性の保証はない。

 NPOの資金は行政からの委託事業と補助金、会員の会費などで賄われ、ほとんどの都道府県が市民活動への支援を定めている。NPOと行政との連携の動きも進んでいる。ただしボランタリー組織が単なる行政の下請け関係に陥らぬよう、例えば英国では、政府がNPOなどの独立性を認め、支援することを約束する合意文書を作成している。
NPOは便利屋という意識が行政に広がって、NPOが下請けにならぬよう双方の協働体制の構築に心掛けねばならない。

 志木市では「市民との協働による行政運営推進条例」をすでに可決して、「行政パートナー」を制度化するという。この制度は、市民との協働によって職員の仕事を肩代わりさせ、行政の負担を軽減しようとするもののようだ。行政主導の体制は変わっていない。
 市民グループは行政といつも対等な関係を築きつつ活動し、下請けにはならないようにしたい。

皆に好まれるのか高層ビル

 「六本木ヒルズ」は、超高層ビルの景観、眺望の素晴らしさ、ショッピング、レストラン街の豊かさによって、華やかにデビューした。「汐留シオサイト」に続く東京再開発の象徴として喝采を浴びている。綿密な準備に裏付けられた計画は大きな成功を収めたようだ。

■ 志木市本町五丁目に建設中の十五階建マンション

 都市の再生をかけて、建築の手続きが短縮され、容積率も緩和されたため、都心の超高層ビルの建設ラッシュは一層盛り上がりを見せている。しかし高層ビルは隣接する古い建物、細い路地に囲まれ、オープンスペースは落ち着かない。谷間からわずかにのぞく空はまぶしい。高額の賃料を負担できる企業や住民は「勝ち組」となり、競争社会の波は荒い。喜んでばかりはいられない。

 このような高層ビルの流行は、都心から離れた郊外にも押し寄せてきた。
 所沢市では十数年前に地区再開発の整備基本計画をまとめ、その結果相次いで超高層マンションが建設された。周辺の住民は眺望を制限され、圧迫感や、プライバシーの問題、ビル風などに悩まされている。歴史的な景観は失われようとしている。
 東上線志木駅周辺の住宅建設は最近とみに勢いを増し、容積率一杯の高層の建築が目白押しだ。住宅建設もとうに十階を越え、十四、五階が当たり前になってきた。慶応義塾大学寮跡地は丘の上に十四階約三百五十戸が建つ。志木駅周辺の中高層住宅の建設は、朝霞市新座市域を含めて、不動産業者の予想によれば、近々一千戸を越すだろうとのこと、和光駅周辺では賃貸住宅は払底しており、朝霞駅周辺の建築計画も活発をきわめている。土地利用の効率化のため建物は空に向かって聳え(そびえ)立つ。


 高層ビルの建築計画が、日照や、風害、電波障害などの保障で済まされても、住む、生活するまちの景観に空が無くなってもよいのか。樹木を植えて緑を添えればよいというのでは空しい。どこのまちにも歴史が息づく。特色もある。高層ビルの建築では、綿密な計画を立て、時間的にも余裕をもって進めるようにしたい。質の高い開発が行われるよう、みんなでもっと考えよう。

志木の「朝日屋原薬局」建物七棟
九十年を経て「国の有形文化財」に登録される


■ 国の有形文化財に登録された「朝日屋原薬局」

 国の文化審議会は三月二十日、志木市の「朝日屋原薬局」の建物七棟を、「国土の歴史的景観に寄与している」と評価して、登録有形文化財として指定するよう文部科学大臣に答申した。
 朝日屋原薬局は志木市本町のバス通り、旧「奥州道」に明治二十年(一八八七)ころ創業したが、今回登録された建物は、明治四十五年現在地に建築された主屋、土蔵、物置のほか、大正、昭和を経て増築された洋館、離れなどの全棟で、縦長の千五百平米の敷地に並ぶ建物が、老舗薬局の店構えと建物構成をよく残していることが評価された。

 すでに登録されている埼玉県内の文化財は、この七件を加えて五十五件となる。古い建物がつぎつぎに消えて行くいま、歴史のかおりを少しでも残しておきたいという気持ちを大事にしたい。

朝霞・志木・和光・新座四市の合併協議は打ち切られる

 四市合併の是非を問う各市の住民投票は4月13日に行われたが、和光市民の反対が賛成を上回ったため、法定合併協議会は、四市合併の話し合いを打ち切った。長い時間をかけ、関係者の多大な努力は報われることなく、各市議会の議決を経て、協議は正式に取り止めとなる。

 和光市民の多くが通勤や買い物などで東京都とかかわりが深く、以前から四市合併になじめないのでは、との危惧がもたれていた。市民の率直な意見が投票結果に表われたのであろう。また新座市の投票結果で、賛成が反対を上回ったとはいえ、僅少差であったことは、関係者にとってショックであったようだ。

この結果は、市民の生活圏が東武、西武の両線に二分されていて、西武線を利用する方々の拒絶と見る向きが多い。

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