大規模開発事業は目白押し

大規模開発事業は目白押し


大型クレーンが林立する浄水場

朝霞浄水場の「高度浄水施設」改造工事

 朝霞市宮戸一丁目に所在する「東京都水道局」の「朝霞浄水場」で大規模な工事がはじまった。
その周辺に居住している市民は、広大な浄水場の敷地に林立する大型クレーンを眺め、
何事が起ころうとしているのかをいぶかっている。

 東京都が所有するこの土地は、朝霞市にあるが、市当局から市民に対しての情報は無い。
この工事について浄水場当局にたずねると、 より安全でおいしい水を求める改良工事で、高度の浄水施設を構築する計画実施中とのことである。

 朝霞浄水場の原水は、利根川中流部の利根大堰から武蔵水路を経たのち荒川を下り、 秋ヶ瀬取水堰で取水、浄水場に入る。
近年河川流域の市街化によって、原水の質が悪化し、これまでは粉末活性炭処理で対応してきたが、 その処理作業が限界に近づいたという。
そこでより良い処理法の検討から、オゾン処理と生物処理・活性炭処理を組み合わせた 「高度浄水施設」の導入に踏み切ったもので、 すでに金町、三郷の浄水場で利用され、良い結果を得たので、朝霞浄水場にも構築することが決まった。

 オゾンは抜群の酸化力をもち、池の底部から噴出させてこれを水と接触させ、 カビ臭原因物質やトリハロメタンのもととなる物質を分解する。
また生物活性炭吸着池では、活性炭の吸着に加え、 活性炭に繁殖する微生物を分解して汚濁物質を除去する計画のようだ。

 朝霞浄水場への導入規模は、全施設の能力の半分に当たる一日当たり八十五万立方メートル、 都民はおいしい水が飲めるようになるとのこと(東京都水道局の資料による)。
朝霞市宮戸の広大な土地が、私たち埼玉県のお隣りに住む東京都民の生活を支えるわけだ。

 いまや多くの人々は、ペットボトルに入った「美味しい水」を飲料水として購入し、 あるいは美味しくするために「浄水器」を使っており、 浄水装置を販売するビジネスは日に日に活発化している。
水道局は、都民に対して安価で味の良い水を供給する使命をもつ。
巨大な経費と資材をそのために投じる計画が、実らぬことは許されない。

火力発電と塩素製造施設の新設

 新聞の折込みで「朝霞浄水場常用発電設備整備事業」の「環境影響評価準備書説明会」が開かれることを知り、 記者は9月10日午後6時半、その説明会場の一つに赴いた。
説明会は朝霞市宮戸、志木市本町、さいたま市根岸、和光市松の木島町、 新座市野火止、戸田市美女木、富士見市水谷でも開かれた。
何故このように広範囲の住民に「準備書」の内容を説明するのか。まず記者の頭をよぎったのは、このことである。
もともと住民は自分の意思で居住地を定め、穏やかな日々の暮らしを営んでいる。
自分のまわりの利便性が良くなり、環境が良くなれば歓迎する。
したがって「環境影響の説明会」と聞けば、何か悪化する恐れのある計画がはじまるのかな、と身構えてしまう。

 会場で配られた資料によると、この会の開催は、「埼玉県環境評価条例」で定められたプロセスの一つであって、 計画地から半径3キロメートルの地域を対象として設定された説明会であった。

 私が驚いたのは、実に準備の行き届いた手回しの良い説明会で、 スライド映写を使い、この事業に関わる20人ものエキスパートが勢揃いで説明、 質問に対しての答弁は、まるで学術発表会のような雰囲気であった。質問には的確かつスピーディーに返答された。
住民の質問は不安を訴えるものが多かったが、動ずることもなく、筋を通すという姿勢に徹していた。

 何故この事業が必要なのか、その理由は明快なものであった。

  1. 地震に対しての対策  地震で電力の供給が止まると、
    そして塩素の供給が止まると浄水の機能停止に陥るから自力の施設が必要である。
  2. 行政運営の改善  インフラ整備、公共サービスに民間の資金と技術を導入して効率化を図る。

 1999年に定められたPFI法(Private Finance Initiative)。日本の法律なのに英国で生まれた法律なので横文字。
水道料金で運営をまかなうという企業感覚の導入。

 さて近隣に居住する一市民として、説明会ではすぐには思い浮かばなかったいくつかの疑問を列挙して参考に供したい。

  1. 地震の際も浄水プロセスが作動したとして、できあがった飲料水を送るための配管は地震に耐えるのか?
  2. オゾン処理プロセスに転換しようとしているのに、塩素の製造(次亜塩素酸ソーダに変換される)は非常時でも必要なのか?
  3. 、火力発電のエネルギーに使うガスの供給は地震が起こっても大丈夫か? 石油の備蓄が必要になるのでは?
  4. 発生する炭酸ガスの地球温暖化への影響は避けられないのでは?
  5. このような大きな事業計画は、進行する過程で地元(朝霞市、志木市など)との意見交換が行われたのだろうか?

 聞くところによると、この計画はすでに昨年の10月、(株)日立製作所を優先交渉権者として選出し、契約を締結、 新たに日立製作所が出資して「朝霞・三薗ユーティリティーサービス」と称する企業が特別の目的をもって設立されていた。
メディアに対してすでに情報は配布されていたが、報道されなかったようだ。
関連する県、市の行政当局の対応も規範に沿っていたので、 特別に住民の側に立ってこれを受け止めようとされなかったのではなかったのでは。
法律的には守られても、その隙間を縫ってという進め方は素直には受け入れ難い。

 当NPO「市民フォーラム」が掲げる市民の「公共参加」の考え方とは大きなへだたりがあるようだ。

 いまや住民、市民の公共に対する参加の意識はだんだん高まりつつあって、 以前のように政治的な反対運動や闘争の影は潜んでいる。
ときには無心で公共に奉仕したい、寄与したいという願望を持つ人々も増え続けている。
年寄りも、会社員も、主婦も、若者も、 あらゆる年齢層の市民が政治的には党派に属さず、自分の主張を掲げる時代がきたようだ。
市民の意識改革は着々と進んでいる。行政を担う方々も、是非市民の方向から見る眼をもって貰いたいと思う。

志木市本町商業地域の高層住宅建設


住宅密集地で高層住宅の建設はじまる

 志木駅から浦和(さいたま市)行きなど多くのバスの通行する志木市のメインストリートでは、歩道を広げる県の土木工事が進められている。
この大通りに面した二箇所、本町五丁目で、合計すると約三千数百平米(千坪)の敷地に、 15階建ての高層住宅2棟、百五十戸の建設がはじまった。
志木市駅には4、5分、スーパー「ダイエー」や駅前の大型開発で生まれた「丸井」からも至近の位置を占める。

 近年新座市域となる志木駅南口には、いくつもの高層住宅が建設され、いまも急ピッチで建築進行中のものもある。
これらは、すでに立ち並ぶ周辺の商業ビルより一層高く、空に向かってそびえ立つことが特徴。
高い容積率は建設業者、不動産業者の魅力であり、一方高層からの眺望もセールスポイントとなるようだ。

 これらの地域は元来「商業地域」として線引きされており、少なくとも道路に面した一階は商店やレストランで、 もし容積率の大きさから高層ビルを計画する場合でも、その上に住宅をのせるという姿を皆がまぶたに描いていた。
すでに長い間営業を続けてきた商業者は、自分の店舗を商業ビルに立て替え、 そのときは高層にして上層は住居や住宅にすることを心待ちにしていた。
しかし志木市本町に計画中のマンション群には、商業施設は設けられない。

 本町五丁目に建設中の高層住宅の建設では、事業主、建築業者が規定によって説明会を開いたが、 この計画がすでに公的許諾を得ていること、営利事業としての採算などを主張するばかりであった。
周辺にはすでに長い間営業を続けてきた商店、商業ビル、住宅があり、これらの近隣の居住者に取り囲まれ、 その真ん中に建つ高層ビルの建設工事(ほぼ一年かかるという)のなりゆきと、 完成後入居する多数の家族たちと自分の営業や生活をどう整合させてゆくか、 果たして一体それが可能であるのかを危惧し、悩んでいる。

 近隣に住む人々は、少なくとも一階には商業地域にとって相応しいテナントを入れて欲しい、入居のときの家財の搬入、 その後の居住者に対しての配送業務のために駐車場を敷地内に設けて欲しい(計画では敷地内にそのスペースが無い)、 また工事中の車両の通行、駐車が近隣の営業を妨げないよう、 また工事の騒音がお客を離散させぬよう配慮されたいむねを申し入れた。
これらの願いがどこまで事業主と建設業者に受け入れられるか、その良識を静かに期待している。

 商業地域で高層住宅を建設する業者には、先行する事業主との整合について適切な行政指導を行うべき時が来たようだ。

 元来土地を線引きし、「商業地域」として指定することは、商業活動を核としてこの地区の都市化を促し、 市民の暮らしを向上させることを目指すもののはず。
建築物の高い容積率は商業地域として線引きされた区域のいわば特権であって、土地の価格も高い。
一方住宅区域の容積率は低いので、建築物を高層にすると、敷地を広くとることが求められる。
これが樹木の多い緑と広い空、空間の楽しみや豊かさにつながる。

 都内の都市開発で繁華街に高層住宅が建設される場合、一階は必ず質の高い魅力的な商店が並ぶことが通例である。
最近できた都心の丸ビルの場合には画期的な成功を収めた。 しかし志木駅周辺にいま建設されつつある高層住宅には、一階に商店街が作られる計画はほとんど無いようだ。
大型の商業施設が整備されれば充分であって、以前から続いていた小売店が苦戦を強いられている現状では、 新たなテナントを探すことは難しくなった。
一階からすべてを居住専用とするビルの建設は、いまや不動産業者の戦略となってしまったのだ。


朝霞市「ハケの山」の基礎工事は急ピッチで進む(本紙3号参照
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